汎用人型ロボットによるデータ収集力がAI開発の今後を左右する(Pixabayからの画像)

 人工知能(AI)とロボット技術は、世界中で目覚ましい進化を遂げていますが、その方向性は国や企業によって大きく異なっています。

 米国のオープンAIやグーグルが商業化路線を進める一方で、メタや中国のディープシークはオープンな形でAI技術を提供しようとしています。

 こうした中、日本は独自の強みをどのように生かし、グローバルな競争の中でどのような立場を確立すべきでしょうか。

 本稿では、日本が持つ製造業の技術力をAIやロボット開発にどのように活用し、国際競争力を高めることができるのかについて、具体的な戦略と可能性を探ります。

AIのコモディティ化と日本の強み

 もともと、オープンAIは非営利団体であるという名目でデータを集積してきました。

 イーロン・マスク氏が出資していたこともありましたが、その後、収益化に転じ、利用者に対して対価を求めるようになったのです。

 この変化に対し、データ提供者は「お金儲けのために使うのであれば、データを提供したくない」という声が強まっています。

 今後のAIの方向性として、私はコモディティ化が進むと考えています。

 利用対価を求められないようになれば、多くの人が情報を提供するようになるでしょう。

 しかし、対価を求められるようになると、データ提供を控える人が増え、非営利団体が開発したAIの方が性能が高いという状況も起こり得ると思います。

 コンピューターの世界には、もともとフリーウエアの精神があり、一度開発したものを皆で共有し、より良いものを創り上げていくという文化がありました。

 これまでのAIの発展も、そうした基盤の上に成り立っていました。

 オープンAIの現在の方向性は、その流れに逆行していると言えるかもしれません。

 グーグルも同様の動きを見せていますが、メタはフリーでAIを提供すると発表していますし、中国のディープシークなども同様の姿勢を示しています。

 今後、AIはコモディティ化していくでしょう。

 日本のAI関連団体がシリコンバレーに行っても、なかなか相手にしてもらえないという現状があります。

 日本には多くのAI関連団体があるものの、残念ながらそのレベルは世界的に見て低いと言わざるを得ません。

 しかし、製造業の技術に関しては、日本は世界をリードする存在です。

 私がAIに積極的に関わっている背景には、「日本の製造業の技術を生かすべきだ」という強い思いがあります。

 オープンAIが提供している生成AI、「チャットGPT」に「汎用型ロボットをどの国で作るべきですか?」と質問したところ、「日本」という回答が得られました。

 中国でも米国でもなく、東アジア、そしてまずは日本であると。世界が日本のロボット技術に注目しているのです。

 日本文化を全く学習していないチャットGPTがそう答えるということは、客観的な評価であると言えるでしょう。

「アーカイヴ」という英国映画があります。

「アマゾンプライム」で無料で視聴できますので、ぜひご覧いただきたいのですが、この映画の舞台は山梨県で、汎用人型ロボットを開発しているシーンが延々と映し出されます。

 自然の風景の中にロボット工場があるという、非常に興味深い設定です。

 これを見て、外国人は日本のロボット技術を特別なものとして捉えているのだと改めて感じました。