副業解禁、労働者のメリットは

 日本で副業が奨励されるようになったのは、2017年ごろからです。同年3月には、首相を議長とする政府の「働き方改革実現会議」が実行計画を策定。経済団体を通じて各企業に従業員の副業を認めるよう促しました。

 これに沿って、厚生労働省は企業向けのモデル就業規則を改訂し、労働者の遵守事項としてきた「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という項目を削除しました。併せて、副業・兼業に関する規定を新設し、副業推進に大きくかじを切ったのです。

 当時、政府は「人生100年時代を迎え、若いうちから、自らの希望する働き方を選べる環境を作っていくことが必要」「副業・兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーション、起業の手段や第2の人生の準備として有効」といったフレーズを掲げ、この政策を動かしました。

 では、労働者にとって具体的にはどんなメリットがあるのでしょうか。

(写真:takasu/イメージマート)

 厚生労働省は、①離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を通じて労働者の主体的なキャリア形成ができる、②本業の所得を生かして自分のやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求できる、③副業で所得が増加する、④本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる――という4点を挙げています。

 一方、企業側にも「労働者の自律性・自主性を促すことができる」「優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する」といった利点があるとしました。

 そうした結果、副業をこなす人は急速に拡大しています。第一生命経済研究所の調査によると、2017年に268万人だった副業者の数は、5年後の2022年に332万人に拡大しました。実際に働いている人に占める割合は4.0%から5.0%に上昇しています。

 また転職サービスの「doda」(デューダ)が2024年1月に公表した調査結果によると、調査対象1万5000人のうち、副業者の割合は8.0%。平均月収は6万5093円で、1万円未満が全体の約半数を占めていました。