
「副業トラブル」が後を絶ちません。消費者庁などによると、最近とくに目立つのはSNSによる副業に見せかけた詐欺被害。「SNSに投稿するだけで副業になる」「スクショを送ると報酬をもらえます」といった甘い言葉にだまされるケースが急増中です。また、そこまでの被害はなくても、副業で何らかのトラブルに遭遇した人は3割を超えるという調査データも公表されました。多くの人が巻きこまれてしまう副業絡みのトラブル。その内実をやさしく解説します。
「タスク案件」の詐欺被害が増加
「副業」をえさにした詐欺事件は止まる気配がありません。今年の春以降のニュースを拾うだけでも、「SNSで副業の広告を見つけた40代の女性がその後、投資詐欺に遭い、385万円をだまし取られた」(秋田県)、「スクリーンショットの画像を送るだけで稼げるという話に乗った40代女性が約20万円を詐取された」(青森県)、「動画を見ればお金をもらえるというSNSの投稿をきっかけに40代の男性が現金32万円をだまし取られた」(三重県)といった事件が毎日のように発覚しています。
とくに目立ってきたのが、タスク副業でのトラブルです。このタスク案件とは、SNSの投稿に「いいね!を押すだけ」「動画を見るだけ」といった簡単な指示に従うだけの作業。相手からは短時間に具体的な指示が何度も送られてきますが、スマホとスキマ時間があれば簡単に稼ぐことが可能として、急拡大しています。
消費者庁は具体例を公表しています。それによると、TikTokなどに多い副業の広告サイトにアクセスすると、「動画を見るだけで報酬」などと勧誘されるものの、副業への参加費用を請求されるなどしてお金を送金してしまい、その後に相手業者との連絡がつかなくなったケースが大半です。同庁には、2024年にこの種の相談が1615件も寄せられ、それらの送金額は合計で10億円を超えていました。

独立行政法人・国民生活センターでも同様の相談が相次いでいます。2020年度に1341件だった相談件数は2023年度には3700件に急増。2024年度も前年度同期を上回るペースで相談が寄せられました。トラブルの発端が「副業への勧誘」だったケースは7割超。相談者の約8割が女性で、その約半数は20代でした。
なぜ、こんなにも多くの人がだまされてしまうのでしょうか。1件1件のケースは異なっていますが、「指定するSNS広告に『いいね』を押すだけ」といった手軽さに加え、いったんは少額ながらも“副業代”が実際に送金されてくることが大きく影響しているようです。タスク通りに「いいね!」を何度も押していると、数百円から数千円程度のお金が振り込まれ、そのうえで詐欺グループは「成功のノウハウを教える」として情報商材を高額で売りつけたり、「もっと高額の仕事を得るには参加費が必要」と言い募ったりし、スキマ副業にいそしむ人から多額のお金をだまし取っていくのです。