自身が作った政治系の「切り抜き動画」を指し示す男性(写真:共同通信社)

 今夏は参議院選挙とその前哨戦とされる東京都議会議員選挙(6月13日告示・22日投開票)が間もなくやってくる。どの人に、どこの政党に一票を投じたらいいのか、SNSの寵児のような人物がまた登場するのか……。物価高やコメ高騰対策などの政策をチェックするのとともに、昨夏以降、一気にその影響力を高めている「SNS現象」についても、改めて整理しておきたい。このほど『日本政治の大問題~陰謀論、裏金・献金、暴走SNSの本質を問う』(朝日新書・参議院議員の辻元清美氏と共著)を上梓した「日刊ゲンダイ」第一編集局長の小塚かおる氏がレポートする。
※“辻”のしんにょうの点の数は一つ

選挙の現場で起きた「3つの地殻変動」

 ここ半年くらいだろうか、SNSと政治についての取材をする機会が増えた。というより、30年近く政治を取材してきたが、昨夏の東京知事選挙以降に起きている“地殻変動”が何なのか分からず当惑するばかりで、その答えを探そうとさまざまな関係者に会って話を聞いてきた。

 地殻変動とは次の3つの現象を指す。昨夏の都知事選で、前安芸高田市長の石丸伸二氏が圧倒的な知名度を誇る元参議院議員の蓮舫氏の得票を上回る次点になったこと(石丸現象)。

石丸伸二氏(写真:共同通信社)

 そして、昨年10月の衆議院選挙で、玉木雄一郎代表率いる国民民主党が議席4倍増の大躍進を果たしたこと。その勢いは半年経った今も継続中で、来たる参院選でどこまで議席を伸ばすか注目されている(玉木現象)。

国民民主党の玉木雄一郎代表(写真:共同通信社)

 さらに、兵庫県の斎藤元彦知事が出直し選挙でまさかの再選。「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首が自身の当選ではなく、斎藤氏の応援を目的に立候補し、真偽不明の情報やデマの拡散、二馬力選挙が問題となった(斎藤現象)。

斎藤元彦兵庫県知事(写真:共同通信社)

 いずれも、いわゆる「切り抜き動画」を中心としたSNSによる情報の拡散が大きな役割を果たしたのは疑う余地がない。

 いったい、選挙の現場で何が起きているのか。有権者の意識にどんな変化が生じたのか──。そんな疑問から、辻元清美氏との共著本『日本政治の大問題』で話を聞いたのは、SNSに詳しい作家・評論家の古谷経衡氏だ。

 古谷氏は1982年生まれ。いわゆる「保守界隈」で言論活動をスタートするが、「ネット右翼」と呼ばれる人たちの狭隘で偏向した思考に接し、彼らから距離を置き客観的な論陣を張るようになったという経歴を持つ。

 古谷氏の説明には目から鱗が落ちた。