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 巨大IT(情報技術)企業の米アップルと米アマゾン・ドット・コムが相次いで発表した2025年1~3月期決算は、いずれも売上高・利益が市場予想を上回る好調な内容だった。しかし、両社ともに米政府の対中関税など地政学リスクの高まりを強く意識しており、アップルはサプライチェーン(供給網)の「脱中国依存」シフトを鮮明にし、アマゾンは慎重な業績見通しを示すなど、リスクへの対応が今後の焦点となっている。

アップル増収増益、脱中国依存を加速 米国向け、印・越シフトへ

 アップルは、直近の2025会計年度第2四半期(1~3月期)決算で、売上高・純利益ともに前年同期比で増加し、市場予想を上回る好調な結果となったと発表した。同時に、米政府の対中関税リスクを回避するため、米国向け製品のサプライチェーンを中国からインドやベトナムへと、大きく転換する方針を明らかにした。主力製品の製造体制見直しを加速し、地政学リスクへの対応を強化する。

○アップル決算は市場予想超え、iPhone新モデルも寄与

 アップルの2025年1~3月期における売上高は、前年同期比5%増の953億5900万ドル(約13兆8600億円)だった。純利益も約5%増の247億8000万ドルとなり、いずれもアナリスト予想を上回った。

 スマートフォン「iPhone」の売上高も2%増加した。堅調な需要に加え、新たに投入した、同社としては廉価なモデル「16e」が販売を押し上げたとみられる。

○狙いは関税リスク回避、サプライチェーン多様化

 一方で、ティム・クックCEO(最高経営責任者)は、米国の対中関税政策が続くことを前提に、2025年4~6月期において、9億ドルのコスト増が見込まれると明かした。将来的にこの影響はさらに悪化する可能性も示唆した。

 このリスクに対応するため、アップルは大胆なサプライチェーン再編に踏み切る。クックCEOは、「4~6月期に米国で販売するiPhoneの大半はインド製に、パソコンなどのその他デバイスのほぼ全てはベトナム製になる」と明言した。

 これは、特定の国、特に中国への製造依存がもたらすリスクを低減するという明確な狙いがある。「全てを一箇所に集中させることには、あまりにも大きなリスクが伴うことを学んだ」とクックCEOは述べ、サプライチェーンの多様化を継続する姿勢を強調した。

 この動きは、米中間の貿易摩擦や地政学的な緊張の高まりを受け、中国に大規模な生産拠点を置くことのリスクに対する投資家の懸念を和らげる効果も期待される。