
トランプ米大統領が13日から4日間の日程でサウジアラビアなど中東諸国を訪問している。中東地域の安定化に向けた行動をアピールする狙いだが、その陰でガザ地区の住民は困窮の度合いを極めている。イスラエルが同地区を完全封鎖してから2カ月あまり。食糧は底をつき210万人の人口のうち50万人が飢餓に直面しているという。極限状態の中で食糧を求めて略奪も起きており、停戦合意と食糧支援再開は一刻の猶予も許されない状況にある。
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
4月22日、あるビジネスマンがSNSに、米フロリダ州にあるトランプ大統領所有の会員制クラブ「マール・ア・ラーゴ クラブ」での夕食のメニューを投稿した。
画像によればメインコースには牛フィレ肉の薄切りとスズキが、デザートにはバニラアイスクリームの添えられた「トランプ・チョコレートケーキ」が振る舞われている。
ビジネスマンや米共和党幹部が出席していたこの夕食会には、ある要人が来賓として招かれていた。イスラエルの極右政党党首で国家安全保障相でもある、イタマル・ベングビール氏である。
ベングビール氏は同日、X上にマール・ア・ラーゴ クラブで共和党幹部らと面会したことを投稿し、こうも述べている。「彼らはガザにおける私の明確な行動方針と、(ハマスに捕えられている)人質を無事に帰還させるための軍事的・政治的圧力を高めるために、食料・救援物資の集積所を爆撃すべきだという立場に賛同してくれた」
ベングビール氏が豪華なディナーに舌鼓を打っていたであろう頃、イスラエルによる攻撃が続くパレスチナ自治区・ガザ地区で人々はどんな食生活を送っていたか。
5月1日付の米CNNの現地ルポに、その一端を垣間見ることができる。この中ではある女性が、6人の子供たちを生きながらえさせるため、ゴミの中で見つけた、虫の湧いたわずかな小麦粉を何度もふるいにかけていた様子が記されている。他に食べさせられるものが何もないからだ。
イスラエルは3月2日、昨秋の紛争開始以来2度目となるガザ地区への人道支援物資の搬入を停止した。イスラエルによる完全封鎖はこれが初めてではないが、その日から2カ月以上にも及ぶ食料や水、医薬品などの遮断は、これまでで最長とされる。
今年1月から3月までの停戦中に備蓄されていた食料は、すでに枯渇したと見られている。国連世界食糧計画(WFP)は4月下旬、ガザ地区の家庭向けの食糧備蓄をすべて使い果たしたと発表した。
その窮状は、目を覆わんばかりだ。