○iPhone、2四半期ぶり増収 iPadは2四半期連続15%増

 アップルの2025年1~3月期業績は好調で、4四半期連続の増収、2四半期連続の増益を達成。粗利益率は47%と、過去最高水準に達した。

 製品別売上高では、全体の5割を占めるiPhoneが前年同期比2%増の468億4100万ドルと、市場予想を上回り、2四半期ぶりの増収となった。

 パソコン「Mac」は7%増の79億4900万ドルで、6四半期連続の増収。タブレット端末「iPad」は64億200万ドルで、前四半期に続き15%増を達成した。

 ただ、腕時計端末「Apple Watch」やスマートスピーカー「HomePod」などの「ウエアラブル、ホーム及びアクセサリー」は5%減の75億2200万ドルで、7四半期連続の減収だった。

○サービス事業、過去最高更新 10四半期連続200億ドル超え

 一方、サービス事業は12%増の266億4500万ドルで、引き続き過去最高を更新した。同部門の200億ドル超えは10四半期連続で、アップルの全売上高に占める比率はこれまで21~28%で推移している。

 サービス部門は、アプリ・音楽・動画配信などのコンテンツ・サブスクリプション(定額課金)サービスや、広告枠販売、米グーグルからの検索ロイヤルティー収入、クラウドのサブスクサービス「iCloud」、デバイス保証サービス「AppleCare」、決済サービス「Apple Pay」など幅広い事業を展開している。アップルは、同社製端末の実稼働台数(アクティブデバイス)が多ければ多いほど、サービス事業の収益が増えるというビジネスモデルの構築に成功している。

○中華圏は苦戦、7四半期連続減収

 地域別売上高は、米州が前年同期比8%増の403億1500万ドル、欧州が1%増の244億5400万ドルだった。日本は17%増の72億9800万ドル、インドなどのその他アジア太平洋地域は8%増の72億9000万ドルと、いずれも増収だった。

 これに対し、中国市場では苦戦が続く。香港と台湾を含む中華圏の売上高は2%減の160億200万ドルで、7四半期連続の減収。ただし、減収率は前四半期の11%から低下した。

○アップル、今後の焦点:中国・法規制・供給網

 好決算にもかかわらず、アップルは複数の課題に直面している。かつて成長をけん引した中国市場では、地場ブランドの台頭などにより、iPhoneの低迷傾向が続いている。米調査会社のIDCによれば、2025年1~3月の中国スマホ市場でアップルは5位に転落した。中国・小米(シャオミ)の四半期ベース出荷台数が約10年ぶりに首位に浮上し、これに中国・華為技術(ファーウェイ)が次いだ。中国におけるiPhoneの出荷台数は前年同期比9%減の980万台にとどまり、市場シェアは13.7%に低下した。アップルは上位5社の中で唯一、出荷台数を減らしたメーカーだった。

 法的リスクも懸念材料となる。グーグル検索エンジン標準設定の見返りとして得ている年間最大200億ドルとも推定されるロイヤルティー収入が、独占禁止法(反トラスト法)違反の判決により失われる可能性がある。また、アプリストア「App Store」のビジネスモデルに対しても、開発者への締め付けが強いとして司法当局から厳しい目が向けられており、是正措置によってはこの高収益事業に影響が出かねない。

 今回クックCEOが明らかにしたサプライチェーン移行の計画については、インドやベトナムでの生産能力を、米国民の旺盛な需要を満たすレベルまで迅速かつ安定的に引き上げられるかが焦点となる。アナリストは、インドのiPhone生産能力(年間約2500万台)だけでは、米国需要の約半分しか満たせないと試算。複雑なサプライチェーンの移行は容易ではないと指摘されている。

 アップルは、好調な決算を背景に、長年の課題であった中国依存からの脱却を具体的に加速させる。しかし、その実現には困難が伴う上、中国市場の低迷、法的な逆風など、対処すべき課題は山積している。サプライチェーン再編の成否と、これら課題への対応力が、今後の同社の成長を左右することになる。