イラン核施設への攻撃を発表したトランプ大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(山中 俊之:著述家/起業家)

「大変に憂慮している。中東に住む自分の家族も心配だ」。そうアラブ人の友人が述べた。

 世界がかたずを飲んで見守っている、最高度に緊迫した米・イラン関係の行方のことである。その直接の要因となったイランとイスラエルの衝突は完全停戦でいったんは合意したが、米国がイラン領土内を直接的に攻撃したのは初めてのことだ。

 米国が、中東に軍事的に介入するようになったのは第2次大戦後だ。

 第2次大戦前、中東は英国とフランスの勢力圏だった。欧州と中東は、7世紀にイスラム教が誕生して以来、十字軍の派遣やオスマン帝国の東欧支配をはじめ数多くの紛争を経験してきた。第1次大戦後オスマン帝国が崩壊すると、その領域を英仏両国が虎視眈々と狙って国境を引いた。

 しかし第2次大戦後、米国が一気に中東への軍事的関与を強めるようになる。理由は、ホロコーストの悲劇を経て建国されたイスラエル支援、冷戦によるソ連との勢力争い、石油利権の獲得の3つだ。

 New York Timesの記事を見ても、中東関係の記事は大変に多く、1面の最も大きな記事になることも頻繁にある。

 元来、歴史的な関係が薄く地理的にも中東から遠い米国は、常にイスラエル側に立つという外交上、譲れないルールにも縛られ、過剰な形で中東に関与してきた。

 誤解のないように補足をしておくと、米国務省には、アラビア語が堪能な外交官が多数在籍しており、国務省内における中東の知見自体は豊富だ。筆者自身もサウジアラビア日本大使館在勤時代、優秀な中東専門の米国人外交官の深い見識に刺激を受けたことも多い。

 しかしながら、政治的な判断になるとこれら中東の知見の蓄積が、時の為政者の政治的思惑や利害によって歪められてしまうように思う。