イラン最高指導者ハメネイ師と会談した中国の習近平国家主席=2016年撮影(提供:Office of the Iranian Supreme Leader/AP/アフロ)

 (福島 香織:ジャーナリスト)

 6月13日、イスラエルがイランの核施設を空爆し、科学者や軍人を殺害したことで中東の緊張は風雲急を告げる勢いで悪化した。イスラエル軍は21日、さらにイラン中部イスファハンの核関連施設を再び空爆したと発表。トランプ米大統領は21日夜、国民向けの演説で、ナタンズ、フォルドゥ、イスファハンの3カ所の核施設を「完全かつ徹底的に破壊した」と述べた。イランが無条件降伏に応じない場合、さらなる軍事行動に踏み切る構えも示した。
 
 米軍は早々にF35、F22などの戦闘機部隊のほか大型地下貫通弾(GBU57)も搭載できるB2爆撃機もインド洋のディエゴガルシア空軍基地に派遣したと伝えられていた。

 ウォールストリート・ジャーナルによれば、B2爆撃のディエゴガルシア基地配備はすでに3月に決定され、目的はイラン、イエメンに対する警告であるという。つまり、米国のイラン攻撃準備は急に始まったのではなく、今回のイスラエルの軍事行動も想定内の出来事だったかもしれない。

 イスラエルはイランの制空権を掌握し、イランのミサイル攻撃は阻止されている。これは米空軍の後方支援があってこそだろう。

 今回の作戦に関して米軍は当初、一切関与していない、と公式には発表しているものの、イスラエルのハメネイ師暗殺計画をトランプが却下したというロイターなどの報道を信じれば、イスラエルの軍事行動は米国のシナリオに沿って行われているとも考えられる。

 それで、世界は、米軍がいつイラン中部フォルドゥの地下80mにあるウラン濃縮施設を攻撃するのか、固唾をのんで見守っていた。この地下施設を破壊できる能力がある兵器は米空軍が保有するB2ステルス戦略爆撃機が搭載できるGBU57だけ。トランプは21日にフォルドゥの核施設の徹底破壊に成功した、という。

 この後待ち受けるのはイランの無条件降伏なのか、それとも徹底報復が始まり、泥沼の中東戦争の始まりとなるのか。

 チャイナウォッチャーとして気になるのは、そうなったとき、習近平の中国が受ける影響だ。