
日米のプロ野球の経営上の最大の違いは「親会社の有無」だろう。
MLBの球団にも「オーナー企業」は存在する。例えばロサンゼルス・ドジャースのオーナーはグッゲンハイム・ベースボール・マネジメントという企業だ。この企業は、ユダヤ系でアメリカを代表する投資集団であるグッゲンハイム・グループの傘下にある。
しかしグッゲンハイム社は、ドジャースの損失を補填したり、資金援助をするような関係ではない。グッゲンハイム・ベースボール・マネジメントはドジャースという「商材」でさまざまなビジネスを展開し、利益を出すとともに「企業価値」を最大限に高めることを目標にしている。日本でいう「親会社」ではなく、ビジネスの「主体」だと言える。
しかしNPBの親会社は、球団ビジネスで収益を上げることよりも「後ろだて」として球団経営を支える、文字通り「親」のような存在だ。
朝日、毎日が「甲子園」を武器に拡販、それに倣って読売・正力が立ち上げた「職業野球」
今に続くプロ野球は、1936年に読売新聞社社長の正力松太郎がMLBに倣い、「プロ野球リーグ」の創設を思い立ったことに始まる。
正力の頭には「プロ野球=職業野球で採算性のある事業を展開する」という発想は全くなかった。当時の日本で、プロスポーツが事業として成立するとは夢にも思わなかったのだ。正力は企業が後ろ盾になって選手を実質的に雇用し、試合興行を見せて親会社の事業に役立てることを考えたのだ。

正力は、財界の有力者に声をかけていく。こうして以下の7社を親会社として日本のプロ野球はスタートした。
・西武鉄道(現在とは経営体制が異なる)=セネタース
・名古屋新聞社=金鯱軍
・阪神電鉄=タイガース
・新愛知新聞社=名古屋軍
・阪急電鉄=阪急軍
・國民新聞社=大東京軍
・読売新聞社=巨人軍
草創期の日本プロ野球の親会社は「鉄道」「新聞」の2業種に限られていた。