原油価格はどうなる?(写真:Ronnie Chua/Shutterstock.com)

アジア諸国が、トランプ米政権の関税措置を踏まえ、米国の貿易赤字削減に協力しようと米国からの原油やLNG(液化天然ガス)の輸入拡大に動いている。トランプ政権との関税交渉に挑む日本も、米国からの原油輸入を増やすことが有効な手立ての1つになるのではないか。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=61ドルから65ドルの間で推移している。米中関税戦争による市場のセンチメントの悪化が続いているが、価格の下値は先週に比べて1ドルほど上昇している。
 
 まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。

 ロイターは4月23日「OPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国で構成)の複数の加盟国が6月に原油生産の一段の拡大を提案する見通しだ」と報じた。OPECプラスの有志8カ国は5月5日に会合を開き、6月の生産計画を決定する。

 OPECプラスの関係者によれば、一部の加盟国が5月に合意した量(日量41万1000バレル)と同程度の増産を望んでいるという。

 米中貿易戦争が激化する中で発表された5月の増産決定は、当初計画の3カ月分に相当する規模だったことから、原油価格を4年ぶりの安値に下落させた。

 OPECプラスは原油価格の下落を防止するため、割当枠を上回る生産を続ける加盟国への引き締めを強化しようとしているが、足並みが揃わないままだ。

 ロイターは23日「(超過生産が最も多い)カザフスタンのアッケンジェノフ・エネルギー相が『原油生産量の決定では国益に従ってのみ行動する』と述べた」と報じた。発言の背景には、原油生産の7割を占める大規模プロジェクトは米石油大手が実権を握っており、カザフスタン政府は彼らの生産活動を制御できない事情がある。