首都ワシントンで行われた軍事パレード(6月14日、写真:AP/アフロ)

世界最強M1エイブラムスも冴えない行軍

 ドナルド・トランプ米大統領は6月14日夕刻、イスラエル・イランのミサイル攻撃で中東情勢が緊迫しているさなかに軍事パレードを開いた。

 米国内では数百の都市2000か所で反トランプの「ノー・キングズ」(王様はいらない)集会デモ(参加者は推定数百万人)が繰り広げられ、軍事パレードは霞んでしまった。

 トランプ氏は念願の軍事パレードを観閲し、軍備増強で抑止力を高める「力による平和」を志向する姿勢を誇示した。

 だが、「中国や北朝鮮の壮大な軍事パレードとはいかず、世界最強のM1エイブラムス戦車も雨にうたれ、キャタピラの音だけが響き渡るだけだった。観衆は予定した20万人を大きく下回った」(リベラル派ニュースサイトPoliticusUSA)。

Trump's Military Parade Was A Complete Flop

As Trump Celebrates Army’s Founding, His Critics Take to the Streets - The New York Times

Trump’s military parade praised for sending ‘strong message’ amid global unrest

 動画再生サイト、ティックトック(TikTok)などには、「送迎サービスをしたり観覧入場券を予約させたりしたが、来なかった者も多く、パレードもワシントン・モールでのイベントも悪天候とあってがらがらだった」と舞台裏を紹介する投稿が相次いだ。

 ギャラップ世論調査では、米国民が最も信頼する公共機関のトップは、軍隊で61%、それに対して大統領は26%。

 軍隊への信頼度に便乗して自らの信頼度のなさを補おうとした(?)トランプ氏だったが、この目論見はどうやら失敗したようだ。

Confidence in Institutions | Gallup Historical Trends

4500万ドルなんてピーナツみたいなもの

 軍事パレードには、米陸海空海兵隊など6軍兵士6600人、M1エイブラムス戦車、MCブラッドレー歩兵戦闘車など128両、航空機49機、軍馬25頭、ラバ2頭、テキサス州フォート・カバゾス所属の軍用犬「ドク・ホリデー」が参加した。

 かかる費用は最低2500万ドル(約36億円)、多く見積もると4500万ドル(約65億円)。戦車による道路破損の修理費なども含まれているが、警備費用は入っていないという。

By the numbers: This weekend’s big military parade in D.C. : NPR

 トランプ氏は「軍事パレードで国力を内外に示す意義を考えれば、費用はピーナツのようにちっぽけだ」とコメントしている。

3 takeaways from the military parade and No Kings protests on Trump's birthday : NPR

 本来なら主要テレビが実況中継する国家的イベントなはずだが、実況中継で特番を組んだのは親トランプのFOX ニュースだけ。

 CNNはじめ地上波3大ネットワークは全米各地の反トランプ・デモや中東情勢の報道の合間に断片的に報じていた。

 ホワイトハウスは、この日の軍事パレードの模様を完全記録するため民間映像制作会社「エバート・ストラテジック」に撮影を依頼したという。