トランプ大統領とマスク氏の対立がエスカレートしている(写真:AP/アフロ)

 二人三脚で大統領選を戦ったイーロン・マスクとトランプ大統領でしたが、来年度の政府予算案への考え方の相違をきっかけに仲たがいが生じ、その対立はあっというまにエスカレートしていきました。

 そして、マスク氏が「私の協力がなければ大統領選挙には負けていた」と言い放つ一方、トランプ大統領が「政府支出削減の一番簡単な方法は、マスクへの補助金を取りやめることだ」と応じたことで、二人の関係悪化は決定的となりました。二人の決別に株式市場も大きな反応を見せ、マスク氏率いるテスラ社の株価は6月5日に14%を超える急落となり、同社の株式時価総額は1日で約22兆円が吹き飛ぶこととなりました。

 世界のメディアを賑わす「天才」と「皇帝」の口喧嘩は連日メディアを賑わしていますが、最強の後ろ盾を失ったマスク氏のビジネスは今後どうなってしまうのでしょうか。

(白木 久史:三井住友DSアセットマネジメント チーフグローバルストラテジスト)

決別する「天才」と「皇帝」

 テスラ社のマスクCEOとトランプ大統領の決別が決定的になりました。マスク氏は大統領選挙をトランプ大統領とともに二人三脚で戦い、トランプ氏の勝利後は大統領の最側近の一人として政府効率化省(DOGE)の初代長官に就任して、政府機関の大胆なリストラに辣腕をふるってきました。

 しかし、大規模減税を含む来年度の政府予算案をめぐり二人の溝が深まり、互いにイライラを募らせる中でマスク氏が「トランプが大統領選挙で勝てたのは私のおかげ、恩知らずめ」と言い放ち、トランプ大統領も「マスクはおかしくなった(Crazy)」「政府支出を削減する一番簡単な方法は、マスクのビジネスへの補助金支出や契約をやめることだ」と応じたことで、「天才」と「皇帝」の決別は決定的なものとなりました。

 二人のこうした対立はメディアで生々しく報じられ、これを受けて6月5日のNY株式市場ではテスラ株が14%下落し、1日で同社の株式時価総額約22兆円が吹き飛ぶこととなりました(図表1)。

【図表1:テスラ株の推移】

(注)データは東京時間2025年6月4日午後10時30分~2025年6月6日午前5時、分足
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成