米中対立と地政学リスクへの対応戦略

 これらの発表が行われた背景には、トランプ米政権下での製造業国内回帰圧力の強まりや、米中間の技術覇権争いに伴う関税・輸出規制といった国際情勢がある。

 エヌビディアは、台湾への投資を強化する一方で、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)へのAIチップ供給契約を締結するなど、グローバルな販売網多様化も進めている。

 中国市場については、現行のH20チップの輸出にライセンスが必要となるなど米国の輸出規制が強化されている。

 フアンCEOはH20のさらなる改良による規制対応は困難との認識を示しつつも、「中国市場への最善の対応方法を評価中」と説明した。

 同社は上海に新たな研究施設を建設する計画だ。規制を順守しつつ巨大市場での足場を維持しようと模索している。

AI市場成長への期待とNVIDIAの課題

 フアンCEOはAIインフラ市場が今後数年間で数兆米ドル(数百兆円)規模に成長するとみている。

 今回の台湾での大規模投資とプラットフォーム戦略は、この巨大市場でエヌビディアが主導的地位を維持・強化するための重要な布石と位置づける。

 しかし、不透明な規制動向や、激化する市場競争、AIチップの軍事転用への懸念など、対処すべき課題も残されている。

 エヌビディアは、これらの課題に対応しながら、AI技術の進化とその普及を加速させるという野心的な計画を推進していく構えだ。

 (参考・関連記事)「エヌビディア、上海に研究開発拠点を計画 米規制下の中国市場で競争力維持狙う | JBpress (ジェイビープレス)