輸出規制緩和が追い風、中東AI開発競争と地政学リスク

 一連の発表は、世界的にAI用半導体の需要が急増する中で行われた。

 エヌビディア製チップはAI開発に不可欠とされ、トランプ政権にとって外交上の強力な交渉手段となっている。

 米商務省は5月12日、バイデン前政権時代に策定されたAI用半導体の輸出規制案を正式に撤回すると発表し、より簡素な新規制を導入する方針を改めて明確にした。

 これにより、サウジやアラブ首長国連邦(UAE)といった中東諸国による、米国製最先端AI半導体の大量購入が許可されるとみられる。

 今後は、中東地域でのAI開発競争が一層激化する可能性がある。その一方で、米国の輸出管理政策と国家安全保障上の懸念とのバランスが引き続き課題となる。

 今回の提携は、サウジにとってはAI技術導入による産業多角化と国際競争力強化、米国ハイテク企業にとっては成長著しい中東市場でのビジネスチャンス拡大という恩恵をもたらす。

 他方で、最先端技術が集中することによる地政学的リスクや、技術格差の拡大といった新たな課題も生じる可能性がある。