無罪判決が破棄された韓国野党の大統領候補・李在明氏(写真:AP/アフロ)

(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)

 残り1カ月となった韓国大統領選挙でダントツの支持を集めてきた李在明(イ・ジェミョン)候補に対して、5月1日、日本の最高裁に相当する大法院で判決が下された。この判決は、革新系で最大野党・共に民主党で正式に大統領選挙の候補者となったばかりの李氏にとって、まさに青天の霹靂(へきれき)ともいえる。

 李氏の司法リスクについては、日本でも何度も報じられてきた。李氏は合計5つの訴訟を抱えており、詳細は後述するが、今回は土地疑惑をめぐる発言が公職選挙法に抵触するかどうかが焦点となった。

 判決は大法院の裁判官12人により下された。李氏の量刑は示されなかったものの、有罪とするものだ。その中で何よりも驚いた点が2つあるので、ここで指摘しておきたい。

 一つ目は、李氏を有罪とみなすというかなり踏み込んだ内容に、裁判官12人中10人が賛同した点である。その結果、この判決文が大法院の見解であるという強いメッセージを発することとなった。

 もう一つはさらに意味深長で、疑惑の発言は韓国民主主義の危機だというような文言が判決文に書かれている点だ。それは大統領候補者となった李氏に対する痛烈な批判であると同時に、その人物を大統領に選ぶのかどうかを慎重に判断すべしという、有権者への重大なメッセージとなっている。

 この訴訟のこれまでの流れを簡単に見てみよう。