
(山本一郎:財団法人情報法制研究所 事務局次長・上席研究員)
最初から分かっちゃいたことではありますけれども、スマートフォンの普及とともに急速に拡大する「オンラインカジノ」が、深刻な社会問題となっています。
芸能界やスポーツ界でも多くの著名人がオンラインカジノにうっかり手を出しており、先日もM-1グランプリを連覇した令和ロマンの高比良くるまさんが思い切り所属事務所から契約解除されておりました。
この問題でよく言われているのが、「オンラインカジノが違法とは知らなかった」という釈明です。違法と知らなかったから免罪とはならないんですが、一方で(あくまで海外での)合法性を強調する悪質なオンラインカジノ紹介サイトなどもあり、ギャンブルしたい人からすれば「おっ、合法なら面白そうだし、やろうかな」となるのも人情です。 また、日本国内では違法なのに『海外では合法』とSNSで謳って利用者を誘引する業者の書き込みも後を絶ちません。
主にTwitter(X)でフォロワー数90万を自称するインフルエンサーとして知られているZ李を名乗る人物らも、オンラインカジノを紹介し、送客するアフィリエイターとして活躍していたとみられます。
また、海外のオンラインカジノ業者の中には、日本国内のプロ野球や格闘技の試合などのスポーツベッティングを自称し、日本人を相手にギャンブルをサービスとして提供している業者も出ています。
そればかりか、格闘技イベント「Breaking Down」では、日本では違法オンラインカジノに当たる「BeeBET」が公式スポンサーとなるなど、完全な反社会的勢力と言われてもおかしくない事例まで出てきています。
◎インフルエンサー「Z李」逮捕…トラブル相手の情報に「懸賞金300万円」投稿、自宅に侵入容疑
当然のことながら、海外で合法的に運営されているカジノサイトであっても、日本国内からアクセスし、具体的に金員を賭けることは違法行為に当たります。
ただ、海外事業者に送客をするだけのアフィリエイターやリーチ(紹介)サイトを摘発するのは刑法・既存法での対応では難しいという議論もあったため、このたび政府は「ギャンブル等依存症対策基本法」を改正し、違法オンラインカジノの広告・宣伝行為を新たに禁止する法律を成立させました。
まあ、ここまで来るのも長かったけど、なぜか「海外サイトをブロッキングしろ」という与太話も百出したため、余計な説明や調整に走り回る関係者も出ました。いまだに総務省では「サイトブロッキングどうしようか」っていう出口のない議論をさせられており、関係者は不毛な時間を費やすことになりお気の毒です。最終的には刑法賭博罪や賭場開帳図利をオンラインにまで伸ばしていく話になりますからややこしいわけですが、 誠にご苦労様でございます。
で、警察庁が公表した調査によると、国内のオンラインカジノ利用経験者は約337万人、年間の賭け金総額は約1兆2423億円に上ります。
推計としてはこのような数字になっているものの、違法賭博については前述のアフィリエイターだけでなく、実質的に掛け金を海外に送金するときに使われる決済代行業者と呼ばれる実質的な闇金業者も問題になります。