(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年5月28日付)

公開された北京のロボット工業団地(5月16日、写真:ロイター/アフロ)

前編「世界経済を大きく変えた産業政策、『中国製造2025』はどれほど成功したのか?」から読む

 カテゴリー別に見ていくと、例えば製造業の大型工作機械である高度な「CNC(コンピューターによる数値制御)」装置については、中国は国内企業が握る市場シェアを2020年までに70%、2025年までに80%に引き上げる目標を掲げていた。

 現在、中国はローエンドのCNC装置で自給を達成し、中程度の装置では目標を上回ったが、ハイエンドについては中国企業が握る市場シェアは15%程度にすぎない。

中国製の金属をかぶせた欧米の航空機

 電気自動車(EV)をはじめとした中国の新エネルギー車(NEV)市場がもう一つの成功分野だ。

 自動車市場全体に占めるNEVのシェアは2015年の3%から大きく成長し、今年は市場の半分を占めると予想されている。

一方、中国の自動車販売台数に占める外国メーカーのシェアは今年1~2月に過去最低の31%に低下しており、2020年以来、市場の3割強を失ったことになる。

 だが、困難であることが判明した分野には、今年までに航空機の国内市場で10%のシェアを獲得する目標を達成できなかった民間航空産業や、進歩は遂げているものの海外企業にまだ後れを取っている半導体産業が含まれる。

 中国の航空機産業はまだ米ボーイングと欧州エアバスに支配されており、大半の先端半導体は台湾から輸入されている。

 航空機業界専門のコンサルティング会社エアロダイナミック・アドバイザリーのマネジングダイレクター、リチャード・アボラフィア氏は中国が外国製エンジンに依存している事実に触れ、「中国が建造している航空機は、実は機体に中国製の金属をかぶせた欧米の航空機だ」と言う。

 在中国EU商工会議所の報告書も技術的なリーダーシップについてロジウム・グループの報告書と似た評価を与えている。

 先端的造船と先端的鉄道設備、NEVに最高得点を付与し、それに続いて農機と電力設備に高評価を与えた。

 だが、北京に本拠を構えるドイツ系シンクタンク、メリックスのマックス・ツェングライン主席エコノミストは、未達に終わった目標ばかりに注目すると中国製造2025の本当の目的を見落とすことになるとクギを刺し、「(中国製造2025が)達成するはずの目的全体、つまり『製造業超大国』になるという目的が見落とされる」と説明する。

中国製造業の進歩がもたらす市場の歪み

 製造業における中国の進歩は、同国の経済と世界の両方にとって数々の問題を生み出した。

 批判的な向きは、主な問題の一つは市場の歪みを生む傾向だと指摘する。時には、とてつもない規模の歪みが生じる。

 経済成長を達成する能力で指導者の業績が評価される地方政府は、補助金を受ける産業を地元に誘致するために中央政府の新たな政策に飛びつく。

 その結果が重複であり、価格を押し下げる競争が拍車をかける国家に支援された過剰生産能力だ。

 これは消費者にとっては良いことだが、企業の収益性や地方政府の財政にとっては良くない。

 在中国EU商工会議所のエスケルンド会頭は太陽光パネルや電池産業を引き合いに出し、「我々はこうした盛衰のサイクルを目の当たりにしてきた」と話す。

「政府は実際に政策のガイダンスを出しており、誰もが同じ方向に突進しているように思える」

 EV業界がその好例で、メーカー112社のうち3社程度しか利益を上げていないと指摘し、「本当に巨大な規模の無駄がある」と言う。