約61㎜という大きなケースに1本針

 2025年に創業250周年を迎えるブレゲは、ウォッチメーカーとしての偉大なる足跡を残したアブラアン-ルイ・ブレゲの工房があったパリで、新しい『クラシック スースクリプション 2025』の発表をおこなった。

 そもそも約61㎜という大きなケースにホワイトエナメル文字盤を備え、そこには1本の針で時刻を表示するというシンプルな構成で、高い視認性を備えたこの時計は、当時ブレゲが考案した広告パンフレットを通じて紹介されたという。アブラアン-ルイ・ブレゲといえば多くの人が卓越した時計職人としてまず思い浮かべるが、彼はそれに劣らず、経験豊かで先見性のあるビジネスマンでもあり、マーケティングにおいても革新的な方法を実行した人物だったのだ。

 新作『クラシック スースクリプション 2025』も、時計のデザインや発想だけでなく、製作と販売方法も革新的な手法によって顧客層の拡大を図り、高級時計の扉を開くという、アブラアン-ルイ・ブレゲの哲学を意欲的に取り入れている。さまざまな意味で、このモデルはブレゲブランドの礎であるといってもいい。

 まず目を惹くまばゆい輝きを放つ美しきホワイトの文字盤は、グラン・フー エナメルが採用され、過去の懐中時計 No.246、No.324、No.383 など、ケ・ド・ロルロージュの工房で製作されていたタイムピースの精神を忠実に再現している。

インデックスの読みやすさを追求

 その文字盤は、熟練時計職人が求めたレベルの美しさを体現している。シンプルかつコントラストを基調とすることでインデックスの読みやすさを追求。その中心には、すべて手作業で青焼きし、カーブが施され、さらに先端に穴が開いたスティール製のユニークなブレゲ針が配されている。

ブレゲ『クラシック スースクリプション 2025』 手巻き(Cal.VS00)、ブレゲゴールドケース、40㎜径 735万9000円

 先端は先が細くわずかに傾いた有名なブレゲ数字と、特別に設計された区切り線がある円形の「シュマン ド フェール(レイルウェイトラック)」が描かれている。数字とミニッツマーカーには、12時位置に配されたブレゲのサインと同じブラックのプチ・フー エナメルが施されている。

 光の加減によって、文字盤の中央と 6 時位置の間には「Souscription」の文字や固有のシリアルナンバー、シークレット・サインが控えめに浮かび上がる。オリジナルの『スースクリプション ウォッチ』で普及したこのサインは、ブレゲ・マニュファクチュールの作品であることを証明し、偽造を防ぐ役割を果たしている。

 このクラシカルな特徴のフェイスは、「シュヴェ」形状のサファイアクリスタルで保護されている。これもまた、アブラアン-ルイ・ブレゲの発明のひとつだ。当時流行していたものより薄く、ドームの形を抑えた形状は、比較的平らな表面を持ち、縁に向かって緩やかにカーブしてケースに調和する、当時としては前例のないものだった。ブレゲ数字やブレゲ針と同様、この特徴的な形状は、現代の時計用語のひとつでもある。

ブレゲ独自のゴールド合金

『クラシック スースクリプション 2025』のケース素材は、ブレゲ独自のゴールド合金ブレゲゴールドは、ゴールド、シルバー、コッパー、パラジウムを組み合わせたもの。直径 40mm、高さ 10.8mm のケースは、他の時計とは一線を画す新しいデザインで、そこには人間工学に基づいた配慮がなされている。

 ブレゲを象徴するフルート装飾は、オリジナル・タイムピースのスタイルを尊重した繊細なサテン仕上げのストラップに変更され、ラグは手首へのフィット感が増すようにカーブが施されている。伝統的なストレートラグよりも、装着感を重視した流れるような外観に仕上げられている。

 メゾンのマニュファクチュールで考案・開発された18Kブレゲゴールドは、75%のゴールドにシルバー、コッパー、パラジウムを加えたもの。個性的な輝きはもちろん、変色しにくく、時間が経っても安定しているのが特徴で、エレガントな仕上がりを持続させる。

 また、あしらわれているケ・ド・ロルロージュは、今年発表したまったく新しいタイプのギヨシェ模様。今までにないこのデザインは、シテ島の特異な曲線とサン-ルイ島のほっそりとした上品な魅力からインスピレーションを得たものだ。

 このように、細部ひとつ一つがメゾンのコレクションを際立たせ、美観だけでなく耐久性にもこだわった設計となっている。