(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年5月7日付)

トランプ大統領に駐中国大使に任命されたデイビッド・バーデュー元上院議員(右、5月7日、写真:UPI/アフロ)

 米国と中国の貿易戦争に際し、部外者はどのような決着を望むべきなのか。その答えは、双方が敗れるという終わり方だ。

 確かに、ドナルド・トランプのアプローチは支離滅裂どころの騒ぎではない。あれは、あらゆる形の協力的な世界秩序に致命的な打撃を加える代物だ。

 あんな「グローバリズム」なら瓦解した方がましだと考える人もいる。

 筆者に言わせれば、他国を食い物にする「列強」が牛耳る世界の方が今の世界より優れたものになるなどという考えはばかげている。

 しかし、トランプの保護主義には負けてもらわねば困るものの、中国の重商主義に勝たせるわけにもいかない。

 こちらも地球規模の重大な困難をもたらすからだ。

危機後も大きく変わらない国際収支の不均衡

 世界経済が直面している数々の問題を理解するには、「国際収支の不均衡」という切り口から始めると分かりやすくなる。

 このトピックは、世界金融危機とユーロ圏金融危機が2007~15年に襲いかかってくる前に盛んに議論されたものだ。

 これらの危機の後、不均衡は縮小しているが、基本的な構図に変化はない。

 国際通貨基金(IMF)による最新の世界経済見通し(WEO)が指摘しているように、中国と欧州の債権国(特にドイツ)は一貫して国際収支の黒字を続けており、米国はそれに見合う規模の赤字を計上し続けている。

 その結果、米国の純国際投資ポジション(対外資産の残高から対外債務の残高を引いたもの、NIIP)は2024年、世界全体の国内総生産(GDP)の24%に相当する額のマイナスに達した。

 米国は貿易収支と経常収支が赤字で、サービス産業が比較優位にあることから、製造業でも大幅な国際収支赤字を出している計算になる。

 熱心な自由市場信奉者なら、「だから何だ」と返すだろう。

 それほど熱心ではない自由市場信奉者でも、もっともな理由から、米国はこれまで数十年間、幸運にも収入以上の暮らしを送ることができたではないかと指摘するかもしれない。

 そのこと自体は必ずしも問題ではない。とどのつまり、米国に借金の返済を強制することなど誰にもできない。

 また、エレガントなものもそれほどではないものも含め、米国にはデフォルト(債務不履行)する方法がいくつかある。

 インフレ、減価、金融抑圧、企業の大量倒産などが頭に浮かぶ。