BMWのドイツ・ディンゴルフィング工場
写真提供:DPA/共同通信イメージズ

 第4次ロボットブームの到来で、米中を中心に熾烈(しれつ)な開発競争が繰り広げられている。背景にあるのは「生成AIの進展」「人口減少」「人手不足」。日本にとってもロボットは社会や経済活動を維持するための生命線だ。本稿では『ロボットビジネス』(安藤健著/クロスメディア・パブリッシング)から内容の一部を抜粋・再編集。最先端のロボット技術と活用事例を紹介するとともに、今後の可能性を考察する。

 2011年にインダストリー4.0が提唱されて以降、工場のスマートファクトリー化が進んだが、今やインダストリー5.0の時代。欧州の自動車業界では現在、どんな取り組みが進んでいるのか?

現在進行形の産業革命

ロボットビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

 みなさんは、最近購入した製品がどのように作られたか考えたことがあるでしょうか。実は、その製造過程で驚くべき変革が起きています。

 ドイツのある自動車工場。そこでは、無数のロボットアームが忙しく動き回っています。しかし、よく見ると従来の工場とは明らかに違う光景が広がっています。ロボットたちが互いに「おしゃべり」し、工場全体の状況に応じて自律的に動きを変えているのです。

 ロボットたちは単独で動くだけでなく、工場全体の生産システムにつながり、まるで工場全体が頭脳を持った生き物のように、最適化された動きをしています。

 これこそが、「インダストリー4.0」の目指す「スマートファクトリー」の姿です。

 インダストリー4.0は、新しい産業革命のコンセプトで、2011年にドイツで提唱されました。この概念は、loTやAIなどの最新技術を駆使して製造業を根本から変革しようというものです。ここでは、ロボットや生産設備がネットワークでつながり、リアルタイムでデータを共有しながら、品質の向上や生産効率など工場全体の生産を最適化します。まさに、工場全体がひとつの巨大なロボットのように機能するのです。