
写真提供:新華社/共同通信イメージズ(左)、Penta Press/共同通信イメージズ(右)
デジタイゼーション、デジタライゼーションを経てデジタル化の最終目標となるデジタルトランスフォーメーション(DX)。多くの企業にとって、そこへ到達するためのルート、各プロセスで求められる施策を把握できれば、より戦略的に、そして着実に変革を推し進められるはずだ。
本連載では、『世界のDXはどこまで進んでいるか』(新潮新書)の著者・雨宮寛二氏が、国内の先進企業の事例を中心に、時に海外の事例も交えながら、ビジネスのデジタル化とDXの最前線について解説する。今回は、自動運転車開発の最前線に焦点を当て、ウェイモ、テスラなどを擁する米国、そして中国で展開される競争の行方について考察する。
交通事故発生原因の9割以上が「人」によるもの
高齢化が進む現代において、人間が死亡する原因は多種多様である。がんや感染症などの病気、老衰、溺死や転倒、薬物やアルコールなどの中毒、自殺、さらには交通事故などが挙げられるが、中でも交通事故は、主に人的要因により発生するものであり、長年決定的な改善策が施されていない。
日本で2024年に発生した交通事故の件数は29万792件で、1959年(20万1292件)以来、65年ぶりに30万件を下回った。2000年以降では2004年の95万2720件をピークに、この20年間減少の一途をたどっている。
交通事故発生件数が減少している理由は、自動車自体の安全技術が向上していることを含め、交通安全対策が強化されたことが挙げられるが、その一方で、高齢者ドライバー対策の強化や飲酒運転の厳罰化など、法制度や政策面の強化も交通事故発生の歯止めとなっている。
さまざまな防止策により、交通事故発生件数は減少しているものの、発生件数の9割以上は、いまだドライバーの不注意や判断ミスなどの人的要因であるのも事実である。つまり、人間が運転手である以上、交通事故をなくすことは難しいという構図は長らく変わっていない。
世界でもこの構図に変化はない。死亡者数は年間100万人以上に達し、人的要因がそのほとんどを占める。