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「121」「79000」――これらの数字が何を表すか分かるだろうか。それぞれ「中国の100万人以上の都市数」「日本の100歳以上の高齢者数」である。人口学者のポール・モーランド氏は、出生率、都市化、高齢者の増加といった、人口動態に関する10のテーマから、世界の歴史と現在を解説し、未来の予測を試みている。そこからは、人口増加が必ずしも経済発展につながらないことや、高齢化が紛争解消に役立っていることなど、意外な事実が浮き彫りになる。本連載では、同氏の『人口は未来を語る 「10の数字」で知る経済、少子化、環境問題』(ポール・モーランド著/橘明美訳/NHK出版)から内容の一部を抜粋・再編集、人口動態が今後の世界をどう変えていくかという論考を紹介する。

 今回は、世界全体の人口動態が「日本化」する可能性について論じる。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年5月10日)※内容は掲載当時のもの

 世界の出生率がどうなろうとも、世界人口は人口慣性によって当面のあいだ減速しながらも増えつづける。しかしながらわたしたちは、スウェーデンの統計学者ハンス・ロスリングが「ピーク・チャイルド」と呼んだ、世界の子供の数が増えなくなる瞬間にすでに達している[39]

 今世紀末には、地球上の人口は今よりもおそらく50パーセント増えていることになりそうだが、5歳未満の人口は5000万人以上減っていると思われる[40]

 出生率は人口変動のもっとも重要な原動力である。理論的には出生率に下限はないのだから、ひょっとするといつの日か、シンガポールの今の出生率でさえずいぶん高かったと思う日が来ないとも限らない。わたしたちはこの世界には出生率の高い文化や社会というものが存在していて、それはずっと変わらないと考えがちだが、たいていは思い込みにすぎない。

 インドの合計特殊出生率はずっと高く、ごく最近になってようやく人口置換水準を切るかどうかというところまで下がってきたのだが、地域別に見ると1.7前後まで下がっている州がいくつもあり、今後インド全体がそれらの州に続く可能性もある。こうした出生率の低下は、貧しい国々が経済発展よりはるかに速いペースで人口動態の近代化の道を歩んでいることを示している。

[39] Rosling, Hans, TED Talks: https://www.ted.com/talks/hans_rosling_religions_ and_babies/transcript (2018年12月21日閲覧).
[40] UN Population Division 2017 Revisions (出生中位推計).(国連人口部の「世界人口推計、2017年改訂版」)